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フェラーリ 612 スカリエッティ
 
フェラーリ 612 スカリエッティ
このクルマについて語りたい
取材協力:コーンズアンドカンパニー
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4シーター・フェラーリの歴史の中で…
フェラーリ 612 スカリエッティ
 新年開幕を告げるデトロイトショーで、フェラーリはファンにビッグなお年玉を用意していた。11年の長きに渡って生産された4座フェラーリこと456シリーズの後継モデルのデビューである。ニューモデルの名は612スカリエッティ(612S)。その懐かしい響きが、50〜60年代にフェラーリのコンペティションモデルを手がけ、数々の傑作マシンを排出したコーチビルダー、セルジオ・スカリエッティへのオマージュであることは言うまでもない。

 ところで、フェラーリの量産型4座モデル(2+2とも言う)の歴史は、1960年10月のパリサロンまで遡る。初の量産モデルの250GTシリーズに、特にアメリカマーケットの要請に応えるために、エンツォがしぶしぶ加えた250GTEが始まりで、当時としは驚異的な1000台近い生産台数を記録する大ヒットとなった。彼には癪なエピソードだったかも知れないが、4座モデルはこの瞬間、フェラーリのラインナップに加わり続けることを約束されたのだ。因みに250GTEは3リッターV12から240psを絞り出し、最高速度は230km/hに達した。40年以上前の4シーター・クーペの話である。

 64年には330GT2+2、67年には365GT2+2、72年には365GT4 2+2、そして76年にはフェラーリ初のオートマチック(3ATで、オプションで5MTを選べた)を搭載した400なども登場する。その間、308GT4やモンディアルなどのV8モデルを除けば、4座フェラーリは一貫して、長いノーズにフロント縦置きのV12を納めたFR方式というレイアウトにこだわり続け、その流れは612Sへも受け継がれている。


全長4.9mのビッグフェラーリ
フェラーリ 612 スカリエッティ
 フェラーリファンには説明するのも野暮と言うものだが、612のネーミングは一時期のフェラーリで使われた、前半の数字が排気量を(気筒当たりの排気量を示すこともあった)、後半の数字が気筒数を示す習わしに従っている。つまりパワーユニットは6リッターV12(正確には5748cc)だ。タイヤは前245/45ZR18、後285/40ZR19を履く。

 エンツォの660psを発生する6リッターV12が搭載されるという噂もあったが、さすがに8000万近くするマシンのユニット使うわけにはいかなかったようで、ベースになったのはマラネロのものだ。5748ccの排気量と最大トルクの60.1kgm/5250rpmはそのままだが、最高出力は発生回転数こそ同じ7250rpmながら、25psアップの540psとなっている。ちなみに最高速度は315km/h、0-100km加速は4.2秒と発表されている。

 トランスミッションはステアリング裏のパドルで操作するF1タイプギアボックスで、6速シーケンシャル。456にあったMTバージョンは今のところ設定されないようだが、そのかわりに変速のスムーズさはモデナやマラネロより洗練された次世代タイプとなる。もはや4座のフラッグシップフェラーリには、MTは不要と言うことなのだろうか?

 456との最大の差は、V12モデルでは初となるオールアルミスペースフレームの採用に尽きる。全長×全幅×全高:4902×1957×1344mmと、456GT比でも長さで139mm、幅で37mm、高さで44mmワイドになったボディだが、車重は1840kgと、逆に456M GTAのATモデルより60kgも軽い。それでいて、アルミを多用したシャシーとボディは60%も強化されている。アルミボディのマイスターとして知られたスカリエッティの名前がついたのは、このあたりに理由があるのかも知れない。


チーフデザイナーは日本人が担当
フェラーリ 612 スカリエッティ
フェラーリ 612 スカリエッティ
フェラーリ 612 スカリエッティ
 スタイリングを担当したのは、当時ピニンファリーナに在籍した日本人チーフデザイナーの奥山清行氏だ。現在は、米国アートセンターカレッジオブデザインのデザイン学部学部長を勤める奥山氏は、エンツォやマセラティ・クアトロポルテを手がけたことでも知られる人物。デザイン全体としては456の正常進化とも言えそうだが、まず気が付くのはさらに長くなったノーズだろう。これはフロントミッドシップを実現するために、巨大なV12ユニットを前輪車軸後方にマウントしたためで、重量配分は前46:後54という良好な値を示している。

 そしてチャームポイントは、フロントフェンダーの後に続く、スプーンですくったような優雅な凹面だ。スケッチにも描かれているこのモチーフは、1954年のフェラーリ375MMベルリネッタ・アエロディナミカ・スペチアーレに使われたもので、フェンダー上に筋のように通った稜線も同じ375から来ている。このクルマは映画監督のロベルト・ロッセリーニが妻のイングリッド・バーグマンに購入したクルマとしても有名だったことから、開発時のスカリエッティはバーグマンとも呼ばれていたらしい。

 このほか、456ではリトラクタブル式だったライトは、コンベンショナルな固定式になり、フロントフェイスを優雅に見せている。


史上最も豪華なフラッグシップ
フェラーリ 612 スカリエッティ
フェラーリ 612 スカリエッティ
 612Sのドアを開けてみよう…そこに広がるのは、なんともゴージャスな革とアルミの世界だ。456とは10年以上の差があるから当然としても、モデナやマラネロですら、612Sの前では時代遅れと言わざるを得ないほど。アルミのペダルやダイヤル類やメーターリングの精緻な質感と、惜しげもなく使われた2色のレザーのコンビネーションは、フェラーリのインテリアを一気にモダンワールドへと押し上げたに違いない。

 センターに据えられた回転計のスケールは1万回転まで刻まれ、その左側には大型の液晶ディスプレイも装備されている。エアコンがデュアルコントロールタイプとなるのも、昔ながらのフェラーリファンには驚きかもしれない。さらに、456比で25%増大した240リットルのトランクルームなら、ゴルフに出かけることだって夢じゃない。  そして最後に、350mmもストレッチされたホイールベースの恩恵について語っておこう。乗ったことがないので推測の域を出ないが(笑)、このクルマの後席に座るのは、もはや苦痛でもなんでもないだろう。そう、612Sには十分な広さのシートとレッグルームが用意されるはずなのだ。

 優雅なボディに4人の大人と荷物を乗せたグランツーリズモで、官能的なV12サウンドに耳を傾けつつ、315km/hの最高速度で、大陸の端から端まで快適な旅を続ける。クルマ好きなら
フェラーリ 612 スカリエッティ
、いつかはそんな夢のような旅を実現するために、人生の階段を登っているはず…。

 だがその前に、お値段はちょっとした問題になるかもしれないのでご注意を。新たに量産型フェラーリのフラッグシップとなる612スカリエッティに下げられたプライスタグは2890万円! 日本男子のもう一つの目標でもあるマイホームが買えそうな値段ではある。(田所孝之)



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