プロフィール スカイラインクーペがおよそ2年ぶりに復活を果たした。国内クーペ市場の低迷や、国産各メーカーが揃ってモデルラインナップを削ぐといった消極的な展開が続く中、ここにきて昨夏のフェアレディZに続き2ドアスポーツというカテゴリーを威勢良く発表しているのは、この日産をおいて他に見受けられない。カルロスゴーンの成せる業とも言うべきだろうか…。曰く「スカイラインクーペは、日本人にとって“郷愁”と“あこがれ”だ」と明言する。その象徴にテールランプには、丸型をモチーフにした伝統的デザインが復活した。
加えて、気になる発言も飛び出した。「次期GT-Rはこのスカイラインクーペをベースとして開発し、世界戦略車になる」と、巷で飛び交う噂をケアするかのように初めて明確化したのだ。とにもかくにも“売れない”といわれる2ドアクーペを続けて発表する日産の積極性は市場でもっと評価されていいと思う。初年度目標は年販16500台だそうだ。フェアレディZが月販1300台で推移していることを考慮するとまんざらでもないと思える。 |
エクステリア この新型の開発コンセプトはずばりふたつ。“ダイナミックでエモーショナルなデザイン”“余裕と感動の高性能な走り”だとか。フロント部分はセダンとほぼ共通のデザインとしながらも、バンパー下部に大きく口を開く2分割タイプのエアインテークがスポーティさを強調する。一方でリアはセダンとかなり異なった意匠が採られたようだ。特に注目したいのが、伝統の“丸目”と呼ばれるストッピングランプだ。クリアカバーに覆われたリアコンビネーションランプ内には、紛れもなく片側に丸目2灯が収められ、かつてスカイラインが日本のスポーツカーの代名詞のように語られたということを、やはり改めて示したいという意向ともとれる。
一方、リアボディ表面の処理もダイナミックさを強調したコンセプトを示すかのように、 丸みを帯びたフレアフェンダーの膨らみと、トランクリッドから潔く削り落とされたリアの面とのバランスが好きな人には好きと言わせる部分になるであろうか。
フロントのヘッドランプユニットはセダンのデザインを踏襲しながらもより鋭角的な意匠となったことが新しい。
ちなみに、ボディサイズはセダンに比べて全高にして75mm低く、全幅は65mm広い1815mmとなってワイドトレッド化(前1535mm、後1540mm)が図られたという。
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インテリア 内装に目を移そう。インパネは基本的にセダンと共通だがチタン調のセンタークラスターを採用するなど、スポーツ感覚はより強調される。異なるのはシートの形状で、運転席と助手席でも微妙に違う意匠が採用された。特に、運転席側のショルダー部分が張り出したシートバックデザインは、コーナリング中に上体のホールド感を高めてくれそうだし、座面はセンター部分を膨らますことで、運転者の下半身のホールディング性能も確実なものとしてくれそうだ。
今回、車体の全高が低くなった分、頭部周りの空間は縮小されている。その結果、全体的な空間は2+2クーペという性質を強めた居住性といえるだろう。
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パワートレイン 搭載されるパワーユニットにはVQ35DE型のV6
3.5リッターDOHCエンジンが選ばれた。セダンの350GT-8で既に採用実績があるもので、吸排気系の更なる効率見直しや、低中速域でのフリクションロス軽減に努め、最高出力は280ps/6200rpm(セダン比+8ps)、最大トルク37.0kg-m/4800rpm(セダン比+1.0kg-m)を実現したとする。これは、同じプラットフォームを用いるフェアレディZのそれと同値だ。
組み合わされるトランスミッションは、5M-ATxおよび6MT。ATは、ギアを完全に固定することが可能な仕様。車両停止時に自動で1速へ変速する以外は、ドライバーのシフトレバー以外によって作動しないという代物だ。これにより、コーナリング中や微妙なアクセルワークの最中にも勝手なシフトチェンジは行われず、よりマニュアル感覚に近いドライビングが可能になったとも言えるだろう。一方の、MTはフェアレディZに搭載されるギアボックスの改良版と捉えてよい。徹底的な小型、軽量化が行われたとあって、R34型まで採用されていた従来の5速MTとほぼ同等の重量とサイズを実現したという。
もうひとつのハイライトとして、ブレーキシステムが挙げられる。もともと2850mmという長めのホイールベースが採用されたシャシーは、サスペンションジオメトリーが最適化されて姿勢や荷重変化の少ない車体特性を得たという。 これら基本性能の高さを生かすべく、さらに、ブレーキ性能を向上させることで、高い制動力性能を得ることが目標とされたようだ。マニュアルトランスミッション車には、前後輪ともイタリアBrembo社製アルミ対向ピストンキャリパー&ローター(前径324mm、後径322mm)が採用されるなど、オーナー心もくすぐる仕様となっているのでは!?
何はともあれ、既に2002年11月より先行して発表された北米では好調な販売とのこと。ここ日本でもクーペ低迷が言われつつも、このクルマが、かつてスカイラインに熱中した世代に向けて、再び大人のためのクーペとして復活したのは評価できるはずだ。
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