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マツダ アテンザ
取材協力 :マツダ株式会社(2002年6月5日取材)
※それぞれの写真をクリックすると拡大表示します

緊急試乗レポート マツダ アテンザ
マツダ アテンザ
フルモデルチェンジ
(2002年5月20日発表)
 
レポート 岡崎 五朗
写真 中野 英幸
マツダ アテンザ クルマ総合カタログ
マツダ アテンザ 新車 見積もり

マツダ アテンザ プロフィール
 アテンザは、マツダが社運を賭けて投入したニューモデルだ。エンジンは2リッターおよび2.3リッターの直列4気筒の自然吸気。ボディタイプは4ドアセダンと5ドアハッチバック、ステーションワゴンの3種類を用意する(ワゴンは約1カ月後に投入予定)。
 日本では珍しい5ドアハッチバックをラインナップしていることを除けば、カタログのスペック欄に驚くような数字が並んでいるわけではないし、インテリアが目立って豪華なわけでもない。うっかりすると“普通のクルマ”として見過ごしてしまうかもしれない。しかし、「ライバルはBMW3シリーズです」という開発陣のコメントを聞けば、ちょっとは興味を引かれるのではないだろうか。BMWの3シリーズといえば、世界でもっとも乗り味のいい中型セダンとして知られているクルマ。典型的な、「味はいいけど値段も高い」という存在である。アテンザの価格は、ざっと見積もって3シリーズの半分。プリメーラやアコードと比べても割安感があるほどだ。にもかかわらず、ライバルは3シリーズなどと豪語する自信はいったいどこからくるのか?

 「まあ乗ってみてください」と促され、走り出す。驚いた。アテンザの走りは間違いなくワールドレベルに達している。これなら舌の肥えたユーザーが多いヨーロッパに出しても恥ずかしくない。実際、ヨーロッパの一部の国では今年分の割り当て台数をすでに売り切ってしまうなど、かなり好調な滑り出しを見せているという。2リッターユニットを積んだ“セダン20C”と、2.3リッターエンジンに17インチタイヤとエアロパーツを組み合わせた“スポーツ(5ドア)23S”をテキストに、アテンザの魅力をレポートしていこう。

スポーツ(5ドア)              
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大柄な男性4人が寛げる室内+広大なラゲッジスペース
 全長4670mm、全幅1780mmというボディサイズはセダン、スポーツで共通。スポーツの方の全高が15mm高いのはルーフアンテナの台座部分がカウントされているからで、実質的には同一だ。異なるのはリアドア(パネル部は共通)以降の形状で、スポーツはCピラーがより後方に伸びている。ノッチがしっかりと残されているため、セダンとの違いを瞬時に見分けるのはなかなか難しい作業だが、よくよく眺めるとCピラー付け根の位置がかなり違う。個人的には流れるようなルーフラインを持つスポーツの方が気に入った。しかし、現実問題として5ドアハッチモデルはなぜか日本では成功した試しがない。そこで開発陣は、なぜ人気がないのかを徹底的にリサーチ。その結果解ったのが、カッコがよければ5ドアハッチでも十分に行けるということだった。実際、スポーツのルックスはとても魅力的に仕上がっているし、受注台数面でもスポーツがセダンをリードしているという。
 室内スペースは広い。大柄な男性4人が無理なく乗り込め、快適なロングドライブを楽しむことができる。加えて、コンパクトなリアサスペンションが生み出す広大なラゲッジスペースもアテンザの魅力のひとつだ。なかでもスポーツのユーティリティは抜群。荷室内にあるレバーを操作すると、リアシートバックがパタンと前方に倒れるとともに座面が連動して沈み込み、さらに広大なラゲッジスペースが誕生する。幅、奥行き、深さもさることながら、開口面積の広さは目を疑うほど。「これならワゴンは要らないな」と感じる人もたくさんいるはずだ。一方、セダンにはシートバックと座面の連動機能はないが、容量はもともとかなり大きいし、トランクスルー式になっているため使い勝手は悪くない。さほど荷物のスリム化に努力しなくてもオートキャンプ程度なら十分に楽しめるだろう。

 内外装の質感向上もアテンザの開発テーマのひとつだ。3シリーズやアウディA4といったヨーロッパの名だたるプレミアムカーと比較すると、細部の仕上げやマテリアルの質感は1ランク落ちるものの、インテリアの質感が投入コストとある程度比例関係にあることを考えれば致し方ないところ(もっと頑張って欲しいが)。むしろ評価したいのはオーディオと空調コントロールを統合したセンターパネルの質感や使い勝手、ドアの開閉音、シート取り付け部の剛性感など、随所に見られるこだわり。比較対象をニッサン・プリメーラ、スバル・レガシィB4、ホンダ・アコードといった国産ライバルに設定すれば、アテンザのインテリアはトップレベルの質感を備えていると報告できる。

セダン
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ボディ剛性やシャシー性能の高さでは3シリーズを彷彿
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 スペックを見ていて気になったのは1780mmというワイドな全幅だ。しかし、運転席に座るとコンパクトに感じる。その秘密は、サイドウィンドウが端からググッと盛り上がったボディ形状にある。車両中心からシートまでの距離やドアミラーからドアミラーまでの距離は、5ナンバーサイズ車とさほど変わらないというのがマツダの説明だが、それは実際の印象と一致する。狭い駐車場での乗り降りにはさすがに厳しさを感じるが、いったん走り出せば大きさを意識させられるケースはほとんどない。「3ナンバー車には乗りたくない」という女性でも、試乗してみればOKを出してくれる可能性はかなり高いと思う。
 また、軽快なドライブフィールも、実際のサイズよりコンパクトに感じさせる理由のひとつだ。まずはスポーツの方だが、2.3リッターの直列4気筒ユニットはもっとも多用する2000rpm〜3000rpm付近のトルクがしっかり出ている。しかも、単に実用性を重視しただけでなく、アクセルを踏み込んだ瞬間のレスポンスやトルクの出方、回転が高まるに連れて聞こえてくる、「フォーン」という抜けのいいサウンドなど、ドライバーを楽しませてくれる要素を兼ね備えているのが嬉しい部分だ。絶対的な動力性能はターボエンジンに及ばないが、回せば回すほど刺激性を増していく自然吸気エンジンならではの醍醐味は、クルマ好きに強くアピールするだろう。日本仕様はとりあえず4速ATのみだが、できればヨーロッパで販売しているマニュアルモデルも出して欲しいと感じた。

 セダンが積む2リッターもいいエンジンだ。バランサーシャフト、可変バルブタイミングシステム、可変ダクト付きエアクリーナー、可変慣性過給システムといった数々のデバイスをもつ2.3リッターに対し、2リッターは“素”の状態に近いが、なかなかどうして、予想以上に元気で上質な走りを味わわせてくれる。もちろん、乗り比べてしまうと、「やっぱり2.3リッターの方がいいなぁ」と感じるが、普段乗っていて不満に思うことはないはずだ。予算に余裕があれば2.3リッターをお薦めしたいが、2リッターエンジンでもアテンザの魅力は十分に味わえる。
 スポーツもセダンも、フットワークの仕上がりはとてもいい。17インチタイヤを履いているスポーツの方が路面へのタッチが若干硬めで、かつコーナリングスピードも速いが、しなやかに足を動かしながら、踏ん張るべきところではしっかりと踏ん張るというチューニングの方向性は共通だ。タイトコーナーでの素直なターンインや高速コーナーでの正確無比なライントレース性も見事。ボディの剛性感を含め、シャシー性能の奥行きの深さは、確かに3シリーズを彷彿とさせるものがある。ロードノイズの遮断性や限界域での舵の効きなどには3シリーズに一日の長を感じるものの、もはやヘビー級とフライ級の戦いといった印象はまったくない。走りの領域において、国産車がヨーロッパ車と同じ土俵にたった・・・・・・。これは本当に嬉しいことである。

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 アテンザの魅力の多くは、数字として表現できないもの。けれども、目に見えない部分に情熱とコストをたっぷり掛け、徹底的に磨き込んでいることは、実際に乗ってみればすぐに判る 。 肝心なのは カタログに見る数値ではなく、 実際にアクセルを踏み、ステアリングを切った時にどう感じるか、ということ。A地点からB地点までの単なる移動手段ではなく、移動の質、移動のプロセスを楽しめるかどうかにクルマの価値を見いだす人にとって、アテンザは非常に大きな説得力を持ったクルマである。