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ニッサン キューブ
取材協力 :日産自動車株式会社
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緊急試乗レポート ニッサン キューブ
ニッサン キューブ
フルモデルチェンジ
(2002年10月8日発表)
 
レポート 佐野 弘宗
写真 中野 英幸
ニッサン キューブ クルマ総合カタログ
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ニッサン キューブ プロフィール
ニッサン キューブ
ニッサン キューブ
 2代目となったキューブも基本的な成り立ちは初代と同じだ。つまりマーチのプラットフォームに“キュービックデザイン”を構築したハイトワゴンである。ただし、どちらかというと男性的なモチーフだった初代に対して、iMACというか“デザイン家具・家電”を思わせる新型キューブは、スズキ・アルトラパン、ホンダ・ザッツに続く“癒し系”というデザインコンセプト。急造された感が否めなかった初代に対して、今回のキューブはおそらくマーチの開発初期段階から同時進行で作業されていたはずで、各部のレイアウトやパッケージ、ラゲッジスペースなどはかなり改善された。

 メカニズム的にもほぼマーチと共通といっていいが、エンジンは1.4リッターのみで、自慢の電動4WDシステムも用意される。唯一キューブで新しいのは通常の4ATに加えて新開発の“エクストロニック”CVTが設定されたこと。先代マーチ/キューブのCVTと較べてギア比もワイドになり、フリクションも低減されたといい、さらにステアリングスイッチによる6段刻みのマニュアルモード機構も備わった。もっとも、これはおそらく「マーチ用の新型CVTの完成がここまでズレこんだ」と考えるほうが自然で、近い将来にマーチにもこのCVTが投入されるのは確実だろう。


乗用車的な空間
ニッサン キューブ
 エンジン/駆動系やサスペンションなどのメカニカルコンポーネンツがマーチと共通なのはもちろん、2430mmのホイールベースもマーチと同寸。旧型に比較してホイールベースが伸びたにもかかわらず、全長が逆に短くなっていることもマーチと同じだ。高くなった全高に合わせて、分厚いソファ風シートなどでマーチより少しだけヒップポイントを上げているが、それでもドライビングポジションはミニバンやSUV的なものではなく、直接乗り較べなければ、良くも悪くも「マーチと一緒かな?」と思える程度の違いしかないそのかわりに頭上空間がだだっ広いのも先代からのキューブの特徴だ。

 リアシートに前後220mmのスライド機構と7段階のリクライニング機構をもうけて、スライドを最後端にすると「レッグルームはシーマ並み」となるのが売り。ソファ風シートといい、キューブは「くつろげる居心地のいい空間」という意図をもって開発されたようだが、厳しいことをいわせてもらうと、見た目こそ心地よさそうなシートも身長178cm(でちょっと太め)の筆者では座面が小さすぎてデレッと座ることは難しい。さらには、せっかく背が高く、ピラーも立ったキュービックスタイルを採用したのだから、ヒップポイントやドライビングポジションも根本から見直せば今までにないインテリア空間を構築できた可能性があるだけに、惜しい気持ちがするのも正直なところだ。
ニッサン キューブ
ニッサン キューブ
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固めの乗り心地
ニッサン キューブ
ニッサン キューブ
 走りに関しては、今回乗った4AT、CVTとも、マーチより乗り心地が気持ち固めかな……といった印象で、よくも悪くも「マーチより車重が重くなり、重心が高くなればこんなところか?」という想像どおりのポイントで落ち着いた感じだ。ただし他の試乗車に乗ったジャーナリストに聞いたところでは「マーチより乗り心地もハンドリングも少し良くなった気がする」との意見もあり、いずれにせよ今回は生産初期段階特有の個体差が少なくなかったようだ。考えてみればマーチの発売からすでに半年が経つわけで、サスペンションや電動パワーステアリングが熟成されている可能性が高いが、かといってマーチとキューブの乗り味に明らかな差があるわけでもない。新設計のCVTは旧型マーチより確実に熟成されて滑らかさも燃費も向上しているが、4ATの完成度も高いから、5万円という価格差を考えると「お好みでどうぞ」というほかない。6速マニュアルモードも小気味いい変速をしてくれるが、まあこれも好みの問題だろう。

 「マーチで丸いクルマの可能性を追求し、今回は四角いクルマで何ができるかを考えました」というキューブは、輸出予定のない右ハンドル専用であることを逆手に取った左右非対称のリアデザインなど、ここ1〜2年の日産作品の例に漏れず、われわれ受け手側のイメージをいい意味で裏切るハイレベルなデザインだと思う。新しくインパクトがありながらも嫌味がない……という点ではマーチと似たところもあり、 先代キューブ同様に スマッシュヒットの予感もある。
ニッサン キューブ
し か しそのいっぽうで、苦しい経営状況の中で急造された先代キューブ同様に、 ハー ドウェアや パッケージングの面で「天井の高いだけのマーチ」の域を出ていないところに、プリメーラやマーチ、ニューZなどに感動した日産ファンのひとりとして一抹の寂しさをおぼえるのも事実。「四角いデザインだからこそ、○○が実現した」もしくは「××をしたかったから四角いデザインなった」といった自動車としての必然性、そして走りでもユーティリティでもいい、新世代の日産車だからこその「機械としての新しい提案が欲しかった」というのは、あまりに贅沢な望みだろうか。