S60 Entryのボディサイズは、全長4575mm、全幅1815mm、全高1430mm、ホイールベース2715mm。カタログに記載された数値を見ると、いかに大柄であるかを思い知らされるが、実車を前にすると、フロントノーズやリアの絞り込みが効いているせいか、ミディアム・サルーンにありがちな鈍重な印象は全くない。いや、それどころか、Aピラーからルーフ、そして、Cピラーへと続くラインが綺麗な弧を描いた姿を見ると、ボルボが"クーペルック"と主張するのにも頷ける。しかも、今回の試乗車、この車格にしては珍しく、鮮やかなクラシック・レッドのボディをまとっていたこともあり、とにかく、4ドアサルーンでありながら、重厚感と若々しさが見事に融合。これなら、女性にも歓迎されるに違いない、と思えた。 さっそく、ボディをひと回りして既存モデルとの違いを探ってみたが、このクルマがS60シリーズの最廉価版であることを知らせるものは何ひとつない。もっとも、“S60” なんていう余計なエンブレムが添えられていたなら、オーナーは真っ先に取り去るだろうが、そのあたりの消費者心理はボルボも承知。ボディ同色バンパーやドアミラー、アルミホイールを与えることで、安っぽさを全く感じさせないクルマに仕上げてあった。 そして、歓迎すべきは、充実したオプション。EBO(Early Buying Offer)パッケージとしてセットにされた特別装備は、CD/MD付きハイパフォーマンス・オーディオシステム、15インチ・アルミホイール(Argon/6.5J×15)+195/65R15サイズタイヤ、本革シート、運転席パワーシート、本革巻きステアリングホイールという構成。これだけの内容が、パッケージ価格25万円で手に入るのも驚きだが、内装だけをグレードアップしたいという人のために、レザー・パッケージなるものまで用意されている。こちらは、本革シート、運転席パワーシート、本革巻きステアリングホイールの組み合わせで、パッケージ価格20万円とのこと。EBOとの価格差がわずか5万円ということから考えると、前者の方が圧倒的に割安だが。しかも、アクセサリー・パッケージ(スタイリング・パッケージ/シティ・パッケージ/レジャー・パッケージ)なども、他のS60と同様、このエントリーモデルにも設定されており、そのどれもが装備品の単品価格を足した金額より、大幅に安いセット価格で提供されているのだ。
今回登場したS60 Entryは、これまでの廉価モデル“S60”よりもさらに30万円安い価格設定、と前述した。ただ、前項でご紹介した25万円のEBOパッケージを奮発した場合、車両価格の差は5万円に狭まってしまう。となると、当然のことながら、今度はS60 EntryとS60 2.4で基本性能にどれだけの差があるのか、が気になってくる。 同じ2.4リッターユニットながらS60 Entryは140馬力、対するS60 2.4は170馬力。だが、結論から申し上げると、S60 Entryを市街地、高速道路、ワインディングロードと試してみて、非力を体感するには至らなかった。同じステージで2台を厳密に乗り比べてみたわけではないが、30馬力のパワー差を感じるのは、高速道路での追い越し加速、もしくはワインディングロードの、たとえば上りコーナーを立ち上る瞬間などに限られよう。つまり、S60 Entryの動力性能にとりたてて不満はない、ということだ。 確かに、堂々たるボディを引っ張るためのパワーユニットが140馬力仕様だと聞けば、大半の方々が走りに対する期待を捨て去るところだろうが、S60 Entryはそうした先入観を見事に打ち砕いてくれる。とりわけ発進時、もっと細かくいえば0〜20m加速に重ったるさのないところに好感が持てる。右足の動きに敏感に反応するというわけではないが、アクセルペダルを踏めば、踏み込んだ量なりの加速を示してくれる。期待通りのスピードで車体を押し出してくれるため、発進のたびにイラつき、ストレスが溜まることがない。 そして、もうひとつ特筆すべきは、乗り心地のよさであろう。試乗車にはEBOパッケージに含まれる15インチ・アルミホイール+195/65R15タイヤが装着されていたが、スタイリッシュなデザインでもインチアップされていないため、ソフトな乗り味が楽しめる。ワインディングロードをけっこうなスピードで攻め込むと、さすがにタイヤの横剛性不足を感じるが、プレミアム・サルーンという本来のキャラクターを考えれば、やはり市街地での乗り味を優先すべき。そう考えると、この足回りのセッティングで十分な気がする。