ガソリンや軽油ではなく、天然ガスを燃料として動くエンジンのこと。それを搭載したクルマが天然ガス自動車だ。Natural Gas Vehicleの頭文字を取りNGVとも呼ばれる。ガスを低温(-162℃)で液化させる方式(Liquefied Natural Gas Vehicle)と高圧(200気圧)でボンベに充填する方式(Compressed Natural Gas Vehicle)があり、乗用車では高圧のCNGVが主流である。
ガソリンエンジンとの違いは、液体であるガソリンと気体であるガスという性格の違いに起因するものがほとんど。まず気体にはガソリンのような潤滑性がないため、バルブとバルブシートを磨耗に強いものとし、さらに気化による冷却効果も期待できないため、ピストンやプラグなどの耐熱性にも考慮する必要がある。ただし、天然ガスのオクタン価は約135と高いため、圧縮比を上げて高出力を得ることもできる。基本的に構造はガソリンエンジンとほぼ同じなので、ガソリンエンジンを改造して天然ガス仕様とすることもできる。ディーゼルエンジンからも改造は可能だが、点火プラグを設ける必要がある。
エンジンそのものよりも、当然ながら燃料系統の違いのほうが大きく、ガスの充填口から始まり逆止弁、ガスボンベ、ガスを送る配管、主止弁、圧力センサー、圧力計、減圧弁など、安全装置を含めて独自の構造が必要となる。
決して新しい技術ではない天然ガスエンジンだが、CO2排出量がガソリンエンジンの約87%、燃費は小型車で約19km/立方メートル、そして価格は約100円/立方メートルと、環境や経済性の面で優れていることから、注目を浴びている。また、天然ガスの埋蔵量は原油よりもはるかに多いこと、その産出地域が世界中に分布しているので安定した供給が見込めることなども大きなメリットだ。デメリットとしてはまだ車両価格が高いことと、航続距離が短いこと(満充填で約200km)だ。日本でもトラックやバスを始め、トヨタ・プロボックスやダイハツ・ミラなどに天然ガス仕様がラインナップされている。
ちなみにタクシー(LPGV)に使用されているのは同じガスでもLPG(液化石油ガス)で、こちらは約2.1気圧(気温20度の場合)と低圧で液化するため、運搬が容易というメリットがあるが、石油などを原料とするため、天然ガスに比べコストが高く、炭素を多く含むためC02排出量も多い。