ジワリと伝えてくる高性能ぶり
BMWのハイスペックモデルに許された称号“M”の頂点に君臨するM6。すでにデリバリーは開始されているが、今回、特別にオーナー車両を借り受けてロングドライブに出かけることが叶った。世の中、フェラーリやランボルギーニなど、その容姿だけで見るものを魅了するクルマはある。とはいえ、M6のそれは、前後左右に専用のエアロパーツを纏いつつ、それなりの存在感を示すものの、先述のモデルとは一味違ってジワジワとわかる人だけ高性能振りを感じさせてくるもの。
抜群のフィット感をもたらすドライバーズシートにみを沈め、最近のBMWの例に漏れずプッシュボタンを押してエンジンを始動させれば、V8フェラーリにも似たカラッと乾いたV10サウンドが周囲の空気を細かく振動さす。だが、意外なことにエンジンが暖まると、意気揚々と奏でていたサウンドは影を潜め、アクセルを深く踏み込んで高回転域で走らない限り、その存在感は感じさせない。街中で走る限りは、オーディオの音もクリアに聞こえるほどの上品な味付けが印象的なモデルなのである。
走り初めは、M6ならではのスペシャリティともいえるこのV10サウンドを、何ゆえこうも、落ち着いた味付けにとどめておくのか? などと少々残念に感じてしまったのだが、しばらくドライブを楽しむうちに妙な納得を感じてしまう。確かに、これみよがしの排気音の大きさは、意気揚々とドライブする上では、気持ち良さに繋がるだろう。とはいえ、普段乗る中では少々、快適性を損なう上、気付かぬうちに疲労度を高めてしまう。まさに0−100km/h加速4.6秒という圧倒的な性能を追及したモデルでありながらも、街中ではその卓越した性能を快適性や実用性で覆い隠すほどの造り込み。モンスターマシンをファーストカーとして使えるようにするという“M”のコンセプトに違わぬ象徴的なクルマなのである。このことは、M6が求めた高性能の方向性が試乗を進めるにつれて感じられるきっかけとなる。










