男の走りに“生一本”
去年の初秋にポルシェが送り出したミドエンジンのスポーツクーペ、ケイマンSに早くもこの夏バリエーションが追加された。人呼んで「素のケイマン」こと、スタンダード仕様ケイマン。ケイマンSでは3.4リッターだった水冷フラット6エンジンが2.7リッターに縮小されたのが最大のポイントだから、いわばケイマンの廉価版ね、というのが一般的な反応だろう。もちろんそれはそれで間違ってはいないが、実は僕はこのクルマにそれ以上のものを期待した。ボクスターSと素のボクスターの関係がそうであるように、素のケイマンのドライビング感覚がケイマンSのそれよりも、むしろスポーツカーとしてピュアなものであることを期待したのでありますね、僕は。
実際のところ、ドイツはフランクフルト郊外に広がるタウヌス丘陵で走らせたケイマンは、嬉しくなるほど小気味好いスポーツカーだった。僕が常に力説しているとおり、スポーツカーの魅力はエンジンパワーの大小で決まるものではないが、素のケイマンは、まさにそれを象徴するクルマだった。
それはどういうことかというと、ケイマンSではエンジンのパワーが若干シャシーの能力に勝っているかのような印象があったが、ケイマンではその両者のバランスがまことに絶妙で、2.7リッターエンジンを存分に回してミドエンジンシャシーを意のままにコントロールすることができる。しかもケイマンSと同じく、ステアフィールが猛烈に繊細ときている。さらにケイマンの場合、ボディがオープンではなくクローズドのクーペであることが物理的にも心理的にも効果を発揮して、スポーツカーとしてのドライビングのピュアさをより明確に浮き彫りにしてくれる。素なモデルであるがゆえに、男をドライビングに駆り立てる“生一本”な味わいを持っているのだ。











