ひと目見て、素直に「カッコいい」と思えるクルマって実は少なくなってきている。例えば衝突安全要件など時代とともにクルマへの要求も変わり、それを受けてカタチを変えることや、デザイン的な変遷や熟成を経て、直感ではなく狙いを持って線が引かれることにより、かつてのように想いひとつで…というデザインは成立しにくい。
同時に我々の目も、そうした様々な要素を鑑みた上で何らかのエクスキューズをつけてクルマを見る。そんな風にして無意識のうちに数々のフィルターを通してクルマのカタチは目に入ってくるのが実際だから、何度濾過されてもなお見る者の心をとらえて離さぬ強いデザインはなかなか存在しない。
しかしアウディの最新作A5は、そんな例に漏れるデザインを携える。事実、ひと目見て素直にカッコいいと思えた。アウディもまた近年の数々のプロダクトで変遷や熟成、挑戦を経て新たなデザインを築き上げ、直感ではなく狙いを持って線が引かれてきた。だがA5を見るとエクスキューズをつけてもなおスッと心に入るカッコよさがあると思える。
もちろんそれはA5が極めて贅沢な2ドアクーペであるという成り立ちによるところも大きいだろう。しかし、それ以上にデザインの力によるカッコよさの具現を感じずにいられない。つまり成り立ちも贅沢ならばデザインにおいて贅沢に、持ちうる力を使った感がある。
もっともその分A5はおいそれと手が出ぬプレミアムなプライスタグを付けている。ただ、その素晴らしいフォルムの構成要素たる中身=プラットフォームは我々にも比較的身近な次期A4と共通するのも事実。A5の短いオーバーハングとこれまでより長いホイールベースが生みだす比率は、次期A4でも継承される。そう考えると、ひと目見て素直に心をとらえるカッコよさは何もこのA5だけでなく、次期A4にも継承される要素なのだと気が付くのである。