速いクルマがあれば、そのぶん確実に移動にかかる時間を短縮できるヨーロッパ、特にドイツならいざ知らず、ここ日本でハイパフォーマンスサルーンの意義を語るのは確かに難しい。すぐに「で、それはエコなの?」という話になってしまう昨今では尚更だ。
しかしアウディRS6のステアリングを握っていると、自動車の価値とは決してそれだけじゃないという、改めて考えてみれば至極当たり前のことを痛烈に再認識させられる気がする。確かにいわゆるエコではない。しかし、そこには存在する意義、乗る意味が濃密なまでに、ある。そう断言できる。
正直に言うと、実際に触れてみるまではRS6にそんな好印象を抱くだなんて、まったく想像していなかった。というのも、実は個人的にはベースとなったA6の走りについて、年を追うごとに急速に熟成されてきたとは言え、まだまだ納得あるいは満足できないでいるからだ。しかも、そこに最高出力580ps、最大トルク66.3kg-mという途方もないスペックのV型10気筒5リッターツインターボ・エンジンを組み合わせているのである。暴れ馬か、それともただ無闇に速いだけか…そこまで思っていたわけではないが、しかしそれに近い想像しかできなかったのだ。
ところがRS6は、もちろん状況が許せば移動時間を劇的に短縮できる凄まじいまでの動力性能を備えてはいるが、しかしそれだけに終わるクルマではなかった。その短い移動の時間を豊潤なものに変えてしまう垂涎の走りの歓びをも、しかと備えていたのである。