フェデリコ・フェリーニ監督が手がけた名画「La dolce vita」をモチーフに、ローマを舞台として初代CLSの国際試乗会が開催されたのは、今から6年前のことだ。当時はその演出はもちろん、今までにないメルセデスの趣向に、招かれた我々は少々戸惑ったことを覚えている。メルセデス・ベンツの有名なブランドスローガンである「最善か、無か」が徐々に忘れられつつある、そんな時代の話だ。
思い返せばこの時こそ、長い歴史の中で何度か行われてきたメルセデス・ベンツの変革期のひとつだったのだ。もちろん初代CLSが登場する以前から、メルセデス・ベンツは近代化し、大衆化しつつあったが、それでも孤高の威厳というか、世のトレンドには迎合しない厳格さを持ち合わせていたと言える。
だが衝撃的なことに、メルセデス・ベンツは初代CLSを「誰も必要としていないけれど、誰もが欲しがるクルマ」と説明する。このとき、初代CLSはメルセデス・ベンツも時代とともに変わるという事実を象徴する1台として記憶されることになった。
しかも目の前に提示されたのはEクラス・ベースの4ドア・クーペ。今でこそ一ジャンルを築いたが、当時はまだライバルもなく、「メルセデス・ベンツはどこへ行くのか?」と心配になったほどだ。だが一方で、初代CLSにはこれまでのメルセデス・ベンツにはない色香が漂い、それが魅力となっていたのも事実だ。
それから6年、目の前の2代目CLSを眺めていると、初代CLSを見た時の予感は間違っていなかったと確信する。初代CLSからメルセデス・ベンツは様々な変化を遂げた。そして今また、2代目CLSは再び変化の時が訪れたことを示唆しているように思えるのだ。
言い換えれば、CLSというモデルはメルセデス・ベンツのターニングポイントに符合するライフサイクルを持っているのかもしれない。事実、初代/2代目CLSはメルセデス・ベンツのデザイン・フェーズの転換点に位置している。