去年の晩秋のこと、南仏ニースからモナコに向かう方向に突き出す大きな岬、キャップフェラの先端に立つ瀟洒なホテルを起点に、あるフランス車の国際プレス試乗会が開かれた。そのクルマの名はシトロエンDS5。今日のシトロエンのラインナップのなかで、標準系の「Cシリーズ」に対してよりアヴァンギャルドかつプレミアムなラインを志向する、「DSシリーズ」の最新型である。
低めのルーフラインがボディ後端まで続く独特のプロポーションと、ヘッドライトからAピラーに向けて走る「サーベル」と呼ばれるメッキの帯が目につくそのエクステリアは、シトロエンが主張するサプライズと大胆さ、それにフランス風エレガンスに満ちていて、世界屈指のリゾートの景観にも違和感なくマッチしていた。
DSシリーズの「DS」が、1955年のパリサロンで衝撃のデビューを果たした当時のシトロエンの超意欲作、DS19に端を発しているのは、エンスーならとっくにご存知の事実だろう。DS19は、地上に降りた宇宙船と形容された未来的なスタイリングのボディと、その内側に備わるエアとオイルを駆使したハイドロニューマチックによるサスペンションなどによって、時代を20年先取りしたクルマと評された、シトロエン渾身の中型サルーンだった。その8年前に世に出ていた2CVとともに、フランスきっての個性派であり先進派でもあるという戦後シトロエンのイメージを決定づけたのが、DS19なのである。
そのDSの名を現代に用いたDSシリーズは、まず2009年にDS3として出現、続いてDS4が日本でも去年発売されたのに続いて、今度はDS5が現時点における真打ちとして登場したわけだ。さてこのDS5、DS3がC3の、DS4がC4のプラットフォームをベースにしていることから推測すると、C5をベースにしたクルマだと思いたくなるが、実際はそうではなかった。実はDS5、C4のプラットフォームをベースにし、そのホイールベースとトレッドを大胆に拡大したシャシーの上に構築されている。