実はこのクルマ、クルマであってクルマじゃないと私は密かに考えている。
もちろん実質的にはりっぱなクルマで、大人が4人乗れれば、時速100キロ巡航も楽勝でできる。だがその存在というか、価値は従来のクルマと同列には語れないように思う。
というか私は率直に言って、この手のクルマはキャラクター商品だと思うのだ。言わばクルマ版“ミッキーマウス”であり“ドラえもん”であり“アンパンマン”。そしてこの世界に先べんを付けたのは、もちろんVWニュービートルであり、新型BMWミニだ。既に世間に広く行き渡り、愛された“世界クルマ遺産”とも言うべきオリジナルがあり、そのイメージを上手に抽出して、キャラクター化したのである。
中でもBMWミニは画期的だった。正直、デザインの忠実度ではいまひとつだったが、クオリティが物凄かった。BMW初のFF車ということで力が入っていたのだろう。従来の常識を逸脱した世界を作り上げてしまったのだ。そう、コンパクトカーにあるまじき質感と剛性感である。
このやり方は世界に衝撃を与えた。今までこの手のリバイバル商品にいまひとつ乗り気でなかったメーカーにまで“この手がある”と思わせたのだ。そして出来たのがほかならぬこのフィアット500だと思う。新型500は04年のジュネーブショーでコンセプトカーの「トレピューノ」としてまず世間に打診され、去年ヨーロッパでデビュー。発表後20日間で5万7000台のバックオーダーを抱えたという話もあるくらいの人気ぶりだ。
しかし、私は正直この500を最初は諸手を上げては歓迎する気にはなれなかった。なぜなら中身は現行フィアット・パンダ。つまり、ミニのような新しさは期待できないからである。