空港から迎えのバンに乗って、かつてフィアットの工場があったリンゴットまで、トリノの街を2年ぶりに走るあいだ、「ほう!」と感心させられたことがひとつ。そこいらの街角や道に、僕が想像していた以上に新しいフィアット500=チンクエチェントがいるのだ。もちろんトリノがフィアットのお膝元であるということの影響は大きいだろうが、チンクエチェント、本国イタリアでのヒット振りは、どうやら半端ではなさそうだ。
僕らが7月末にトリノを訪れた理由のひとつは、このチンクエチェントに加わった新しいバリエーション、500Cを現地で試乗することにあった。カブリオレともコンバーチブルとも取れる頭文字「C」が車名に加えられたチンクエチェントは、想像どおりそのオープンバージョンだが、しかしそれは、フロントのウインドシールドだけ残してフルオープンにした、通常のカブリオレではなかった。A、B、Cピラーをセダン同様にすべて残し、天井の部分を電動開閉式のキャンバストップとした、そういうオープンモデルだった。
現地でプレゼンテーションしてくれたフィアットとアバルトのデザインディレクター、ロベルト・ジオリートによれば、フロントウインドー以外はすべて取っ払ってしまうミニのようなオープンにすると、チンクエチェントは個性が希薄になってしまうので、敢えてキャビン形状を残すデザインにしたのだという。たしかに、チンクエチェントの「らしさ」はミニ以上にキャビンの形状によるところ大だから、その考えには僕も大いに賛同である。
しかもそのデザインは、標準ボディ以上にチンクエチェントらしく見えるが、それにはちゃんと理由がある。1957年にデビューしたリアエンジンの先代フィアット500の場合、キャンバストップが標準的な仕様で、スチールルーフはむしろ少数派だったのである。先代の場合その理由のひとつに、スチールルーフだと空冷2気筒エンジンの音が室内に篭ってうるさく、むしろキャンバストップの方が快適だった、という事実があったらしい。