ジャガーXF。折りしもジャガーがインドのタタ社の資本傘下に入る時期とオーバーラップするように登場したこのクルマ、これまでのSタイプに替わるジャガーの新しいミドルレンジモデルとして、ジャガーのサルーン系列のなかで上級のXJとベーシックなXタイプのあいだに位置することになる。しかしこのXF、これまでのジャガーサルーンとはかなり雰囲気が違う。1968年に世に出た初代XJのスタイリングの進化版といえるデザインを採る現行XJと、その縮小版というべきスタイルを与えられたXタイプ。それに対して従来型Sタイプは、1950〜60年代にスポーツサルーンとして勇名を馳せたジャガー・マークUの現代版といえるスタイリングを与えられていた。ところが新しいXFのボディには、過去のジャガーを彷彿とさせるフォルムもディテールも事実上備わっていない。
つまりイアン・カラムをボスとする現行ジャガーデザインセンターが、創始者ウイリアム・ライオンズ卿が打ち立てたジャガーデザインの伝統的なラインを受け継ぐことを敢えて止めて、新しいジャガーデザインの構築を目指したと考えていいだろう。
であるならこのXFのエクステリア、新しいジャガーらしさに満ちているだろうか? なにせ新解釈のジャガーだから、これまでの伝統にとらわれる必要はないが、しかし「ジャガー」という言葉の意味と語感に相応しいものであることは望まれる。そういう観点からXFを見ると、流れるようなルーフラインが目につくフォルムは、強い独自性こそ感じられないものの、ジャガーのイメージに背かない流麗さや獰猛さを備えていると思う。しかし残念なのはそのディテール、特にフロントマスクで、メーカーの説明では初代XJのライトやグリルのイメージを再現したものというが、少なくとも僕の場合、どんなに想像力を働かせてもXFのフロントから初代XJの顔を連想することは不可能だった。