アウトバーンからこんどはニュルブルクリンク・サーキットを走る。サーキットを走るLFAに乗り換える。というのは安全上の理由でロールゲージと5点ベルトが備わるからだ。こちらもヘルメットをかぶり、万全を期す。この日のニュルはトヨタの占有走行ではない。多くのテストカーが走るプロチームの専有走行だ。1年前のニュル24時間レースでLFAのプロトタイプを駆ってレースに参戦したが、あの時よりもリアの安定感は大きく増していた。市販タイヤで走ると限界性能の高さよりもそのコントロール性に驚く。軽めのステアリングだが、軽い車体は蝶のように舞う。高速でジャンプする過酷なサーキットだが、ここで鍛えられたおかげで難なくこなす。バックストレートでは5速で9000回転まで回り、6速にシフトアップ。スピードメーターは280km/hを超えている。
強めのブレーキングで最終コーナーまでやってきた。一周20kmの長いサーキットであるが、LFAのスピードで走るとあっという間だ。腕時計でラップタイムを測ると7分50秒前後。もしドライ重視のタイヤで攻めていれば、7分40秒を切ることはそれほど難しくないだろう。チーフエンジニアの棚橋さんは「タイムより官能」と言うのだが、タイム的なポテンシャルも決して低くはない。
市販まであと一年。さらにブラッシュアップされるLFAに期待が高まるが、世界限定500台、日本の割り当てが165台に限られる。3750万円は消費税でiQが買える価格だ。売れるかどうかもそうだが、どんな人が乗るのか気になるスポーツカーである。
余談だが、昨年LFAがニュルブルクリンク24時間レースに参戦したとき、同じニュル好きな経営者同士ということで、アストンのベイツ氏と豊田章男さんはニュルで出会っている。その縁でiQがアストンにOEMされることになったそうだ。そう、サーキット外交が行われていたのだ。
ところでLFAだけでなく、GT-Rも幻のホンダV10もなぜニュルで開発するのだろうか。話は簡単。世界中のどんなところでも“速く、安心して、快適に走る”には、ニュルで鍛えると都合がよいから。こんなに厳しいコースは世界中どこにもない。だから、世界中のプレミアムブランドがドイツの田舎町に集うのだ。
80年の歴史があり、全長20qの前半10qは下りで、後半の上りはとにかく高速で、路面は荒れて、エスケープもない。つまり、失敗は「大クラッシュ→死」を意味する。昨年のニュル24時間レースでは2人の命を飲み込んだ。
200km/hを超えた領域の操縦性を確認できるコースは世界でも少ない。260km/hでステアリングホイールを切ることができるコースが他にあるのか。この速度では空力が重要だ。リアのリフトは抑えられているのか、フロントは浮かないか。こんなことを確認できるのは、ニュルだけなのだ。だがニュルはスポーツカーだけの聖地ではない。欧州のミニバンやSUVもここでしっかりと鍛えられているのだ。