昨年のフランクフルトショーでデビューしたメルセデス・ベンツのコンセプトカーF700は近未来の自動車を予感させる技術が満載されている。今回スペインで開催されたメルセデスベンツの環境技術ワークショップは、その全貌が明らかになっただけでなく、なんと実物のF700に乗ることができたのだ。早速レポートしたい。
F700は究極のガソリンエンジンを搭載している。メルセデスではガソリン(オットーサイクル)とディーゼルの良いところを併せ持ったエンジンなので「ディゾット」と名付けているが、なんともユニークな名前ではないか。学術的にはHCCI(均質予混合自己着火エンジン)と呼ばれるもので、ガソリンエンジンをディーゼルのように自己着火させる仕組みが新しい。ただし、実際にはすべての負荷(回転域)で自己着火させることは難しく、3500回転くらいまで自己着火する。それ以上のパワーを発揮する領域ではプラグによって点火している。
ディーゼルはガソリン並にクリーンに、ガソリンはディーゼル並の燃費に、というのがお互いに課せられた課題であったのに、どちらがゴールに近いかを検証すると、最近ではディーゼル・エンジンのほうが進化してしまっている。
アメリカの排気ガス規制はガソリンもディーゼルも同じ規制値をクリアする必要がある。少し前までカリフォルニアでディーゼル・エンジンを売ることは不可能とさえ言われていたにもかかわらず、ディーゼル・エンジンは世界一厳しいといわれるカリフォルニア規制(LEV法)をクリアしてしまった。最新のディーゼルはガソリン並にクリーンなのだ。
しかし、ガソリン・エンジンはまだディーゼル・エンジン並の燃費を達成していない。どこまでディーゼルに近づけるかが、今後のガソリン・エンジンの課題なのだ。
メルセデスが開発した「ディゾット」エンジンは、4気筒で排気量が僅か1.8リッター、電動ターボとマイルド・ハイブリッドを組み合わせる。このマイルド・ハイブリッドは回生ブレーキとアイドルストップが目的だ。
エンジン本体はいくつかの工夫が施されている。例えば回転数などにより圧縮比が可変する機構を持っている。さらにディーゼル並の高圧縮比を実現し、わずか1.8リッターでも最高出力238ps、最大トルク40.8Kgmを発生している。気になる燃費は17Km/L以上。
排ガス規制はアメリカのカリフォルニアで最も厳しいSULEV(超超低排ガス規制)をクリアするという。メルセデスのディゾット開発担当者は「ディーゼルは触媒に沢山のレアメタルを使うので、あまり沢山の台数は売れない」と述べ、ディゾットは排気ガスの後処理が不要なくらいクリーンなことが美点であるようだ。