ちょっとしたクルマ好きは、メルセデスAMGのブラックシリーズの存在を受け入れることが難しい。約5000万もするSLにどんな価値や意味があるのだろうか。一つの答えは、私の想像だがマクラーレン社に対する反抗精神の表れではないだろうかということだ。
2004年に登場したSLRは正直いうと商売としては失敗している。ユーロ高も手伝って6000万という破格な値段がつけられた。その直前にはフェラーリがエンツォを開発し、カーボンボディの初値を8500万円としたことが発端だったかもしれない。フェラーリを意識したマクラーレンはメルセデスを巻き込み、6000万円のスーパーカーを開発した。マクラーレンにとってはゴードン・マーレイがデザインした一作目から数えて二作目だが、今回はイギリスに生産工場まで建ててしまった。
商売と交渉に長けたイギリス人は巧みにメルセデスの資金を絞り出したと見ていい。その証拠にSLRロードスターの試乗会ではマクラーレンのスタッフは一人もいなかったのだ。メルセデスはマクラーレンの亡霊から逃れるべく、AMGをその代替にする覚悟である。これがブラックシリーズを開発したマーケティング上の理由ではないだろうか。つまり次期SLRがあるとすると、AMGが独自で開発することは明白である。
ラグナセカで一緒になったアメリカのジャーナリスト曰わく、ニューヨークのウォール街には2万人の金融関係者が働き、その平均年収は25万ドル(1ドル120円計算で3000万円)。マネージャーなら1〜2億円の年収だったという話を聞いた。そんな連中はクルマの本質など関係なく、高いクルマほどよく売れたそうだ。
でも、今回の金融危機でスーパーカーバブルは崩壊した。この状況でブラックシリーズを買うユーザーこそ、本物エンスーではないだろうか。
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