新たに発表されたC63AMGクーペが最新のダウンサイジング・コンセプト・エンジンを採用しなかったことに、ニヤリとしているファンも多いことだろう。そもそも2006年に登場した6.3リッター NAのM156ユニットは、メルセデス・ベンツ市販車用エンジンがベースではなく、AMGがすべてを独自に開発したオリジナル・ユニットとして注目を浴びた。
ONE MAN ONE ENGINE。エンジンの生産は一般的な流れ作業ではなく、一人の職人が1から10まで責任をもって手作業で組み上げ、その証明としてサイン入りプレートを添付するほどエンジンへこだわりをみせるAMGにとってM156は悲願のオリジナル・ユニットだった。それまではスーパーチャージャーを採用していたが、オリジナル製作にあたって大排気量NAにこだわったのは、現代的な低回転・大トルクとスポーツカーらしい高回転・高出力を両立させるため。さらに、レスポンスの鋭さや官能性においてもNAが理想的と謳われていた。
最近になって5.5L直噴ツインターボ・エンジンに切り替わっているのは、パフォーマンスを維持しつつ環境性能を高めるために他ならない。ダウンサイジング・コンセプトによる燃費改善効果は40%前後にも及ぶので、時代を考えれば致し方ないだろう。C63AMGクーペ、およびマイナーチェンジしたばかりのC63AMGのセダンとステーションワゴンがNAを採用しているのは、ボディがコンパクトなため環境性能がそれほど悪くないこと、そして5.5L直噴ツインターボではトルクが大きすぎるということにある。
もしかしたらこういった大排気量車はそう遠くない将来に消えゆく運命にあるかもしれないが、それだけに貴重な存在。この6.3L NAはCクラス以外では、高性能版のM159ユニットがSLS AMGに残されるだけになる。