格段に増した切れ味の良さとダイレクト感の高さにより、新型E63AMGはまさに現在のAMGを象徴する1台へと生まれ変わった。それは先代W211のE63AMGとは圧倒的に異なるテイストから伺える。ひと言で表現するなら、より“過激”になったのである。そしてここに、AMGがAMGらしくあるための答えが強く表現されているというのが、実際に触れてまず感じたことだ。
今やAMG伝統の高性能化は当然のものとして受け止められ、ライバルも含め高性能化には頭打ち感も漂う。それだけに、他と比べいかに分かりやすいキャラクターを構築できるかが、AMGだけでなく多くの自動車メーカーにおける重要課題といえる。
実際、AMGが数年前に発表した完全自社設計・開発となるM156と呼ばれる6.3リッターのV8はベストインクラスの高性能を実現する。インタビューではAMG社長フォルカー・モルンヒンヴェーク氏自身、「我々にモア・パワーは必要ない」と言ったことからもそれは明らかだ。
つまり動力性能面においてはむしろ燃費向上とCO2排出量低減が直近のテーマであり、この点以外で“らしさ”を追求する必要がある。そこで出てきたのが冒頭に記した明確なキャラクターの構築であり実現である。
AMGのこうした姿勢が現実となったのは2007年に発表したC63AMGだ。日本で昨年700台以上という好セールスを記録したこのモデルは、最大市場アメリカでも爆発的人気を得たほか、本国ドイツでも好評を得、それまでAMGの第2位市場だった日本を逆転するほど売れたのだ。
その理由はC63AMGがあらゆる意味で“過激”だったからに他ならない。デザインや性能、そして走り…全てにAMGがアッファルターバッハ本社で生産されていた頃を感じさせるエッセンスがちりばめられた。つまりあらゆる面で過激な“かつてのAMG”がそこに蘇ったような感覚があったのだ。
その後に発表されたSL63AMGも、やはりあらゆる面で過激だった。特に2ペダルMTのAMGスピードシフトMCT7の採用は、以前のSL55AMGが持っていたラグジュアリー性を後方に押しやり、攻撃的で豪快さが前面に出た。そしてこれも好評を博したのだった。
こうした経緯を踏まえて新型E63AMGが開発されたと考えれば素性はつかみやすい。つまり“先の2台で好評を得た過激で豪快なキャラクターを、ビジネス・リムジンであるEクラスにいかにしてインストールしたか?”ということである。
それには後述する、新型E63AMGにおける最大のトピックである“AMGライドコントロール・スポーツサスペンション”が深く関わってくる。