ことの始まりはGMの経営破綻から始まった。それまでGMの傘下にいたスバルはGMが保有するスバルの株式をトヨタが引き受けたことで、スバルの親的な会社がGMからトヨタに変わったのである。常識的に考えればそれまでのトヨタの関連企業のように「スバルがトヨタ化される」という危機感がスバルファンの間にも広がったけど、スバルが幸運だったのはトヨタ側もクルマ好きの豊田章男社長が就任したことだ。「退屈なクルマをこれ以上作るのはやめて、もっと愉しいクルマを作ろう」と章男社長が考えたのは当然であり、FT86プロジェクトが始まった。
この話はスバルにとっても渡りに船であり、軽自動車の生産から撤退することで、空いたラインで何を作るのか摸索していたところであった。iQを生産するとか、色々な提案があったようだが、スバルの価値を高めるためにも水平対向エンジンを使ったスポーツカーを作ろうということになったわけだ。
ま、ここまでは順調に話は進んだかもしれないが、スポーツカーとなるとお互いに欲がでてくるものだ。LFAしかりGT-Rしかり、ややもすると作り手の自己満足に終わってしまうケースが少なくない。スバル側のチーフエンジニアは増田年男さん。トヨタ側は多田哲哉さんだ。私は二人ともよく知るエンジニアであるし、この二人ならきっと旨く行くだろうと思っていたが、やはり外野の声は小さくなかったようだ。開発が進むなかで色々な注文がトヨタ側から突きつけられていた。
しかし、スバルにとってはトヨタからの注文は追い風ではないだろうか。スバルは気がついていないかもしれないが、最近のスバルは原価低減の嵐が吹きまくり、自分達が作りたいクルマがなかなか作れていなかったのだ。